2009年8月19日水曜日

流れる星が降りそそぐ

クリストファー・コキノス(Christopher Cokinos)
ユタ州ローガン市(Logan, Utah)

[筆者はユタ州立大学(Utah State University)の英語教授で最近の著書に『落ちる天空:彗星との親密は歴史(The Fallen Sky: An Intimate History of Shooting Stars)』がある。なお、下の写真はNGSの『Night Sky』から]

夏のフィナーレを飾るのはパーセイド流星群(The Perseid meteor shower)であろう。毎年決まって8月の半ばに起こるから数日前のことである。(もし見逃したら来年を期待されたい。)

ここ何世紀もの間、キリスト教徒の多数は殉教者セント・ローレンス(St. Lawrence)の命日が8月10日であるのと重ね合わせてその流星群を象徴的に『セント・ローレンスの涙(the tears of St. Lawrence)』と名付けている。19世紀の半ばになり、イタリアの天文学者ジョヴァンニ・シアパレリ(Giovanni Schiaparelli)が流星の正体は『彗星の塵埃(じんあい)』であるという結論に達した。つまり「彗星が軌道を走る時に放出する微小な物質」ということだ。

降り注ぐ流星の現象は、地球が一年の特定の時期に、特定の『連なった塵埃』の軌道を横切った時に起こる。パーセイド流星群の場合、(今年は)8月12日から数日にかけてがピークと観測され、その流星群はスイフト・タトル(Swift-Tuttle)彗星から放出された『塵埃』で、その残存物体は北の空に見えるパーセウス(Perseus)星座(下図の左右)からその下方に現れる。(上図:1.ガス状の部分 2.上部の尾 3.核 4.太陽に向かって)

実際の流星は『殉教者の涙』と言われるほど詩的な状景ではないが、それなりの物語りがあ
る。


そもそも太陽系の形成は塵埃から始まっている。(途方もない大昔に)星は消滅し、星は炸裂した。残存した星が遥か彼方から形成を始めた。重力に支えられ、最後に埃、ガス、氷、岩などが凝結(ぎょうけつ)し、惑星や彗星となった。その塵埃が時たま地球に降り注ぐことになる。

パーセイド彗星(上図)の塵埃は8月半ばにきらめくように燃えながら大気中を急速度で流れるので、我々の目にも止まるのである。他の宇宙の塵埃はもっとゆっくり移動する。その塊りは表面積の割には比較的小さいので、最も小さい粉末でも地球に向かって落下することができる。宇宙の塵埃粉末を研究しているワシントン大学の天文学者ドナルド・ブラウンリー(Donald Brownlee)に言わせると「もし君がレタスを昼食にしたら、多分あまり食べないだろう」ということになる。

事実、毎年宇宙から4万トンもの塵埃が地球に落ちてくる。中には星からの物質や、炭素、アミノ酸、その他生命の形成に不可欠な有機体も含まれている。 インド・ヨーロッパ語族の『塵埃(dust)』の語源は『dhus-no』で、『狂った状態(fury)』という言葉に関連している。どうやらそんな意味が当っているようだ。何はともあれ、5億年も前に吹き荒れた途方もない『塵埃の嵐』が最終的に我々の太陽系となったのである。

1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

宇宙が形成した途方もない歴史は考えただけでも気が遠くなります。
「流れ星を見たら、それが消えない内に願い事をすると叶う」と言われていますが、何億年の歴史を考えるとそんな気持ちになるのも無理はありませんね。