2009年1月1日木曜日

「晴ゴル雨読」(せいゴルうどく)


藤松忠夫(ふじまつ ただお)2008年12月31日

[筆者は、永年日本航空のニューヨーク支社の要職にあった。博識で読書家、翻訳書に、E.W. ホーナング(E.W. Hornung) の「二人で泥棒を(The Amateur Cracksman)」がある。K.T.]


32年におよぶマンハッタン生活にピリオドを打ち、オレゴン州ポートランド (Portland, OR) から車で7分のワシントン州バンクーバー市 (Vancouver, WA) のゴルフ場の中にある家に越してから1年余になる。[写真はポートランド市からフード山(Mt. Hood)を展望。]
 スタートまで徒歩5分なので、晴れればゴルフをするが、雨が降れば好きな本を読みふけるか、料理に凝って毎日を過ごしている。
 ここでもNYタイムスは毎朝宅配されるし、ネットを開けばNHKやTBSのニュースは観られるし、情報を得るのに不足はない。
 

最近読んだ面白い本は、まずマイケル・コナリー (Michael Connelly) の推理小説「ザ・ブラス・バーディクト (The Brass Verdict)」。陪審員をお金で左右する話だ。お金をもらって陪審員の表情を読み取る商売も登場する。裁判員導入の日本に紹介したい話だ。
 
次は、デイビッド・バルダッチ (David Baldacci) の「キャメル・クラブ (Camel Club)」の続編で「デバイン・ジャスティス (Divine Justice)」。人を2人殺した主人公のストーン (Stone) が生き返り、ついに生き延びる。スリル満点だ。

 
小説のほかは仏教にも凝っていて華厳経(けごんきょう)の現代語訳を読んでいる。金持ちの息子、善財童子(ぜんざいどうじ)が修行のために、さまざまな人物に教えを乞いに行く件(くだり)は面白い。特に美しい遊女に解脱法(げだつほう)を教えられるところがいい。
 仏教の根幹はあらゆる欲望を捨て去ることだが、ベテラン遊女ともなるともう性欲すらも超えているのだろう。
 
最近の金融危機で、投資の神様と言われるウォーレン・バフェット (Warren Buffett) は2,160億
ドルの財産を一挙に37%失ったというが、NYタイムスのインタビューでは「ミステイクですねえ。でもミステイクでもしないと、朝ベッドから飛び降りる元気がでないからね。ハハハハ」と笑っている。これもまた、物欲を超越しているようだ。

アメリカでも日本でも、やれ景気後退だ恐慌の前触れだ、と騒いでいる。3週間ほど前に日本でタクシーに乗ったら、女性の運転手が「マスコミの騒ぎ過ぎですねえ。あなたの財布が直ちに空になるわけでもあるまいし」と笑っていた。

あまりにも静かな我が家から世界を覗いていると、バフェットや運転手の笑いが思い出されてくる。
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1 件のコメント:

JA Circle さんのコメント...

晴耕雨読の心境ですね。羨ましい限りです。
私も、もっと本を読まなければ。