2008年12月22日月曜日

次期大統領に選ばれたオバマ

志知 均 12月11日

次期大統領にアフロ・アメリカン(黒人)のバラク・オバマの選出、またこの秋に始まった金融危機が経済危機へと広がってきている現状を見ますとアメリカの社会、経済の全体がおおきな転換期に入ってきたのを痛感します。社会の根底が揺らいでいるという意味で今のアメリカは1930年代初めのアメリカに比較されます。1929年1月に大統領に就任したハ-バ-ト・フ-バ-(共和党)は就任演説で "I have no fears for the future of our country” と述べましたがその年の10月に株の暴落が起こり “Great Depression” が始まりました。(因みにブッシュ大統領はこの夏までアメリカ経済は本質的に健全だと言っていました。)フ-バ-政権は金融機関や鉄道会社その他の企業の建て直しに20億ドルを超える、融資をしましたが失業者は増えるばかりで1933年には1500万人に達しました。そのような状況のもとフ-バ-に愛想をつかした選挙民が次期大統領に選んだのがフランクリン・ル-ズベルト(民主党)でした。

選挙戦で公約したNew Deal政策をル-ズベルトは次々に立法し行政に移しました。なかでも失業保険制度(Unemployment Insurance)、証券取引法(Security Exchange Act)、社会保障制度(Social Security System)、テネシ-渓谷開発公社(Tennessee Valley Authority)、連邦預金保険公社(Federal Deposit Insurance Corporation)の設立などは特筆に価します。また公共事業計画(PWA,WPAなど)が推進され、学校、道路、灌漑などの建設に数百万人の失業者が採用されました。PWAやWPAで親や従兄弟が雇われ苦境を切り抜けたというシニアの知人の話を聞きますとたいへんだった当時の社会情勢を身近に感じます。1935年に成立した労働関係法は組合の団体交渉権や不適当な労働環境を会社側が改善する義務などを規定しました。ル-ズベルトのこのような政策はかなり社会主義的なもので資本主義を標榜する保守派から非難されましたがその施行に成功した理由の一つは、知人によれば大統領がラジオで毎週国民に話しかけたコミュニケ-ション(炉辺談話として有名)でした。

75年前の経済危機の時に比べれば今回の経済危機はそれほど深刻ではないと言う人もありますが、失業率の増加、マイナスのGDP,破産する会社や閉業する商店の増加をみていると不安は高まります。議会が金融機関に7000億ドルの救済融資を決めたにもかかわらずクレジットの流通は凍結状態です。その結果、住宅売買、建設は停滞し、自動車産業は破産寸前です。国民はオバマに大きな期待を寄せていますが,ル-ズベルトがやったように金融、経済機構の立て直し、失業者の救済などを迅速にできるかどうか注目されています。オバマは失業対策として公共事業の促進やオイルに代わるエネルギ-源の開発プロジェクトを公約していますがこうした政策には多額の出費($1 trillion dollars…100兆円以上)が必要です。 孫の代まで政府の財政赤字が残るかも知れません。
1930年台の大不況はドイツ、日本のファッシズムの台頭を促し第二次世界大戦をもたらしました。今回の大不況がテロ活動の活発化や地域戦争の勃発だけでなく大国間の冷戦の再現を招くことにならないように願っています。
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